手塚統のはちみつトマト日記

はちみつを使ったトマトの栽培、しいたけの栽培、趣味のMOTOR、など徒然に。

RACERS 其の四

八代の意見が取り入れられ、スイングアームピボットが下げられた88NSRは、冬の間にオーストラリアに空輸されたが、それまで使っていたサーキットが使えなくなっていた。

当時日本はバブル景気に沸いていた。どっかの不動産屋がサーキット近くのゴルフ場を買収したのだが、プレイ中に近くのサーキットからの音がうるさいとのことで、そこも買い取ってしまった。
オーストラリア人にとっては、モータースポーツもメジャーなものであるが、日本の不動産屋のオヤジにとっては、暴走族の騒音と変わらないのである。

そのような事情でテストが遅れ、春先の鈴鹿でのテストで八代はマシンの異常を訴えたが、ガードナーはメカ音痴なので、何も気づかなかった。
八代の意見は「マシンのせいにするな」とのことで却下されてしまった。

88年型はガードナーの意見も取り入れられ、フロント加重を上げる為、ステアリングピボット位置も下げられた。

低すぎるスイングアームピボット位置で腰砕けになり、更にフロント加重を増やしたのだから、前に進まないマシンになったのは容易に想像できる。

当時チーム・ガリーナにも88年型NSR500が供給されたいたが、マシンが届いた時点で、チーム代表、ロベルト・ガリーナ氏は、一見てすぐ「このマシンのディメンジョンは間違っている」と指摘していた。

音痴のガードナーもスペインGP終了後に異常に気づき「八代の意見を聞いておくべきだった」と後悔していたようだが、ときすでに遅く、スイングアームピボットを上げ、キャスターを寝かせた改良型フレームを投入して巻き返したものの、チャンピョンを防衛することは出来なかった、それでもランキング2位になったのだから、さすがではある。

続く。