手塚統のはちみつトマト日記

はちみつを使ったトマトの栽培、しいたけの栽培、趣味のMOTOR、など徒然に。

狂おしい程の愛情

クローズアップ現代」でのインタビュー

さすが孫正義だ。

私の感想も述べないし、解説もしない。ただ文字に残しておきたかった。

読んだ人が、それぞれの解釈をすればいいと思う。



国谷 今夜は、ステイーブ・ジョブズ氏と、10年来のビジネスパートナー、ソフトバンク社長、孫正義さんにお越しいただいています。
彼が亡くなってから、世界の反響を見ていますと、改めてその影響力の大きさ、存在の大きさというのを感じて本当に残念ですね。

孫正義 そうですね。本当に残念で仕方ないですね。また、本当はもう少し前から、相当体悪かったかもしれないんですけども、亡くなったのがね、今回のiPhone4Sの発表会の翌日ですよね。自分が生み出した子供のような作品が発表されるまで、それを見るまで、その何としてもね、死ねないっていう、その発表会のすぐ直後に、今度CEOを受け継いだティム・クックと話をしてて、そしたら、時計を見てあわてて、今から行かなきゃって、どこ行くのって聞いたら、今からスティーブに呼ばれているから、報告しなきゃ。元気すぎて困るんだよって言ってたんですよ。ねぇ、まさか、その翌日に亡くなるなんて。

国谷 それにしましても、改めてふり返ってみますと、これまでこの世の中に、存在しない既存の製品と全く違うコンセプトを持った製品を次々に作り出して、さらにサービスも生み出した、この革新的な発想力、製品開発の思想というのは、どこにあったんだろうかと思ってしまうんですけれども。いろいろとお話しする機会もおありになったと思いますけれども、彼が新しいものをつくるときの、なんでしょう、きっかけというか、発想の原点というのは、何に?

孫 彼は、人生は一回に限られていると、その限られた人生の中でね、その自分が存在していなくても、あるようなものを作ってもしょうがないじゃないか。自分が存在したから、世の中を変えれた、人の生きざまを変えられた、という、そのくらい、みんながびっくりするようなね、驚かすようなものを生み出していきたいという、そういう情熱がすごくあったという風に僕は感じています。

国谷 たとえば、このケータイに慣れている私たちは、スマートフォンが出てきたときに、えっと本当に驚かされましたよね。

孫 もう、開発中でね、iPhoneというものが一切発表されていなかった時に、いろいろ話していましたけど、世の中にあるケータイというものが、何とこの美しくないアグリーなものだ。あんな不恰好で使いにくくて、メールだって打ちにくいし、ネジだらけで、こんなもので人間が使っているということ自体が俺は許せないな。もっと美しくて、素敵なわくわくするようなものを作って見せるから。世の中、一変させてみせる。そのしゃべり具合がね、経営者じゃないです、エンジニアでもない、まるでね、ピーターパンが今から冒険の国に空を飛んでいく、お前も一緒に海賊船に乗って、空飛んで行こうという。そういう語りかけのような、なんか、目がキラキラ輝いて、言うんですよね。吸い込まれちゃうんです。一緒に行きたいって、彼の中ではそういうまるでいたずらっ子のように、世の中の皆を腰抜かさせて、そういう思いですよね、なんか、その、退屈なね、ただ、ビジネスのために売上げ上げるための、今期の決算のための、そんな発想、どこにもないです。

国谷 そうすると、初めから、何もボタンのないケータイというコンセプトがあって、しかもその美しさにとことんこだわりながら、こんなものを作ってほしいと、そういう概念から入っていくわけですか。

孫 まあ、10年くらい前から、インターネットに対するその思いというのは、彼の中では相当強くあって、パソコンの世界もインターネットとどんどん融合しましたね。彼は音楽も、iTunesでね、そのiPodを通して、インターネットと(融合)させましたよね。ケータイも、今までのケータイも、しゃべるためのものではなくて、インターネットを自由自在に使いこなして、音楽とゲームと写真と、そういう融合したものが、iPhoneであり、今までのケータイという電話、電話とは異次元ものを作りたいということだったんだと思うんですよね。

国谷 あのインタビューしたときに、印象に残っていたのは、例えば、人々は組織の中に入っていくと、自分が個性的で独自の考えを持っていることを忘れがちになる。だから、私はパソコンとか作っている機器に対して、感情というものを入れたいんだ。

孫 そういうことをすごく感じましたね。単なる工業製品ではなくて、作品であり、まるで人格であるかのような。今度のiPhone4Sでね、siriという新しい音声認識をして、まるでそこに自分のアシスタントがいるかのような機能を登場させますけれども、そういうとこからも、なんか、そこに人がいるような。そういう愛情を感じましたね。

国谷 その愛情とか、愛おしさというのは大事だったんですか。

孫 狂おしいほどの愛情を感じられるか。その製品にね、作品に。そういう思いですよね。ただ、製品を愛するということではない。狂おしいほどという、そこが大事なんですね。彼にとっては。

国谷 ハイテク機器と愛せるかというのは、なかなか今までは合致しませんでしたよね。あの、次に彼がどんなことを発想していたんだろうか。ということを多くの方は知りたいと思っていると思うんですけれど。預言者でもあったと思うんですね。

孫 もしね、彼が後20年30年生きていたとしたら、彼はプレゼンテーションで新製品発表のとき、最後にもう一つ、いつも彼が言うんです。最後にもう一つ、皆さんにお見せしたい新しいものがあります。iRobot

国谷 iRobot

孫 もし彼が、あと2、30年生きていたとしたら、一番本当は作りたかったのは、iPhoneiPad、いろいろこう続いて、最後は彼は人が愛せる感情豊かな、ただ作業がやれるというロボットじゃなくて、人が狂おしいほどに、人間が愛せる一緒にお伽噺の絵本を読んでくれる子供に。そういうものを彼は最後に登場させたんじゃないかなって気がしますね。

国谷 今日は、どうもありがとうございました。