手塚統のはちみつトマト日記

はちみつを使ったトマトの栽培、しいたけの栽培、趣味のMOTOR、など徒然に。

自由貿易と食文化そして食育 5

前記のような事情から、日本では一部の例外を除いては農業は儲からず、当然後継者も居ない。
都市近郊の兼業農家が一番得をする制度になっている。

この調子で行くとあと10~20年もすれば、国産農産物は激減し、ますます輸入に頼るようになる、まるで過去のイギリスの過ちを見るようである。

普通の都市生活者は、スーパーに色々な産地の国産農産物が安価に並んでいるのが、当たり前のことと思っている、それがいかに危うい状態にさらされているのかなど、思いもよらない。

ある時期から、国産農産物がスーパーから消え、輸入品ばかりになり、さらに何らかの事情で輸入が減ったりすればどうなるだろうか。1993年のコメ不作の時、消費者は慌てふためいて、買い占めに走った、容易に想像がつく。
流行に敏感なマスコミや学者は、素早く手のひらを返し、農政軽視のつけが回ってきたと書き立てるだろう。
都市生活者もこうなって初めて、農業は農家のためでなく自分のためと気づくことになる。

このような事態を防ぐのが食育だと思う、有名なフランスの食の週間は一流シェフが学校を回り、保護者も交えて、食について学ぶ。
調理法だけでなく、同じ農産物でも同じではない、この味はこの風土が創り出すもので、掛け替えの無いものだということも学ぶ。
有名なロマネコンティは僅か4ヘクタールの葡萄畑で採れたものだけが認定される、その気候、その土壌、風土がそこにしか無いからだ。

日本ウイスキーの父、竹鶴政孝が、理想の産地を求めて北海道の余市に、たどり着いたのも同じ理由だろう。
一流の料理人が、自分の理想の料理を作るために、全国を、さまようのも同じ理由だと思う。

まずいとばかり言ってきたがイギリスでも食育の芽が出てきているようだ。

http://openers.jp/culture/tips_event/jamieoliver_20120501.html


日本に多いアダム・スミス国富論の著者、1723年産まれ、暴れん坊将軍時代の人、笑)信者も、そうでない人も↓のブログを、輸入農産物の実態です。

http://blogs.yahoo.co.jp/dhfmq748/53938324.html

*アダム・スミスといえば見えざる神の手が有名だが、自由放任にすれば回り回って経済が良くなる、だから会社の利益を追求してればいいんだ、と、都合よく解釈している人が多いが、神学者であり哲学者でもある彼が、そのような理論を展開するはずもなく、むしろ、そういう人物、組織が排除されるという意味もあるようだ。

最後に、ノーベル経済学賞ポール・クルーグマン自由貿易についてのコメントを載せてこの連載を終えたいと思う

「国際貿易に無知な人ほど自由貿易の効力に幻想を抱きがちである。自由貿易が経済にポジティブに作用するかのような神話が造られやすい傾向があるが、貿易を専門とする経済学者はそのような仰々しい見解を自由貿易に抱いているわけではない。
また一般論として輸出増で増えた分の雇用が輸入増での雇用減によって相殺されてしまうため、自由貿易は雇用増出をもたらさない」



自分の組織だけ儲かればいい、つまり自分さえ良ければ良いという人物は社会の前線から去って欲しいものである。


完。